以前のコラムで、犬の皮膚病はさまざまな原因で起こることをご説明しました。
(「皮膚被毛の病気について」はこちら)
今回はその中でも、膿皮症という病気に焦点を当ててご紹介します。膿皮症とは、細菌の感染が原因で発症する皮膚の病気です。
清潔で健康な状態の皮膚を保てていれば問題になることは少ないのですが、なんらかのきっかけで皮膚のバリア機能が壊れると発症しやすくなるので、日ごろの皮膚・被毛のケアがポイントになります。
今回はその原因や症状だけでなく、ご家庭でどういったケアをすればいいのかについても解説します。
膿皮症の原因
膿皮症は、皮膚の表面に細菌が増えすぎてしまうことで発症します。
とはいえ、健康な皮膚であれば問題になることはあまりありません。
皮膚は、細菌やカビ、異物などが外から侵入するのを防ぐ、いわゆるバリアのような機能をもっています。
健康なときにはこのバリア機能が正常に働きますが、以下のように皮膚に悪影響を及ぼす要因があると、その機能が損なわれて発症すると考えられています。
- 暑くてジメジメした環境で生活する
- ブラッシングのしすぎで皮膚が傷つく
- シャンプーや入浴不足で皮膚・被毛に汚れがたまる
- 皮膚を爪で引っかいて傷つける
- 膿皮症以外の皮膚の病気(アトピー性皮膚炎や脂漏症など)を持病にもつ
- ホルモンの病気(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症など)を持病にもつ
膿皮症の症状
膿皮症の主な症状は、かゆみ、脱毛、赤み、発疹です。それ以外にも、膿疱(膿がたまった水疱)や表皮小環(フケを伴った丸い赤み)が現れることもあります。
病変が皮膚の深くにまで到達すると、皮膚に痛みを覚え、膿が出ることもあります。
膿皮症の治療法
膿皮症による病変が狭い範囲であれば、抗菌成分を含む軟膏を塗って治療します。
全身に赤みや脱毛がある場合は、内服薬や注射薬を処方します。
それ以外にも、薬用シャンプーで皮膚をきれいにすることも重要です。
またアトピー性皮膚炎などの持病がある場合は、その治療も並行して進めます。
膿皮症の予防と対策
膿皮症の予防には、日ごろのケアで皮膚・被毛を清潔に保つことが一番重要です。
その方法として、シャンプー、ブラッシング、入浴などが挙げられます。
この中で、アトピー性皮膚炎などの持病をもつ場合には皮膚が敏感になっているので、より刺激が少ない入浴をおすすめします。
膿皮症の原因となるフケや皮脂を落とすだけでなく、皮膚のバリア機能を保つことも予防につながります。
そのほかにも、特に夏は暑くてジメジメしているので、犬が生活するお部屋ではエアコンや除湿器を設置して、過ごしやすい環境を整えてあげましょう。
まとめ
膿皮症は細菌感染によって起こる皮膚病です。皮膚のバリア機能が弱まると発症するので、日ごろから皮膚・被毛のケアを心がけましょう。
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監修者:Vrite(ブライト)
獣医師で専門書の編集経験がある代表を中心として、ウェブコンテンツの記事作成などを手掛ける。
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